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佐藤一朗の「勝つ為のトレーニング」第2回

みなさんこんにちは。

 気がつけば「佐藤一朗の勝つ為のトレーニング」などというタイトルが付いてしまったこのコーナー。

確か最初は僕の店の宣伝コーナーだったはずなのですが。。。。まぁ、それも何時ものことですね。

「読んでくれる人の興味のあることを書く!」これがライターとしての基本だと心得ております。ということで第2回目は前回お話ししたトレーニング指導に付いて詳しく説明して行きましょう。 

<カウンセリング>

 僕が依頼を受けてトレーニング指導にあたる場合、最も重要視するのがカウンセリングです。これと言って難しい事を聞くわけではないのですが、最初に選手の目標や希望を聞いておかないと全てのボタンを掛け違えてしまう恐れがありますからね。

 例えば大学自転車競技部に所属している選手(3年生)の指導をすると仮定しましょう。その選手が卒業後は就職して自転車競技から離れるのであれば残りの時間で最大限の結果に結びつけるようなトレーニングプランを考えます。

 しかし卒業後プロ(競輪選手)を目指すのであれば目先の競技成績も大切ですが、基礎体力の強化やポジションの修正など一時的に競技成績が低下してしまうような取り組みもプログラムに入れて行かなくてはなりません。

 これが現役のプロ選手の場合もう少し話が難しくなります。ご存じの方も多いと思いますがプロ選手は半年間を1つの期間として成績の評価がなされています。

 その選手が走ったレースの競走得点の平均でランキングが決定されると言うことです。その為一度でも極端に悪い成績を取ってしまうとランキングに大きな影響を与える事もあり、降級や降班に繋がってしまうリスクを常に背負っている訳です。つまり筋バランス急激にを変更したり、基礎体力を上げるための基本的なトレーニングに終始するようなプログラムは組めないと言うことになって来ます。 

 そこでトレーナーズハウスでは、プログラム作成の為に最低でも3つの目標を共有する事にしています。

最終的な目標 : 競技選手として現在描いている最大の目標の共有

        選手が目標としているイベントでの活躍や、SS級、日本代表などと言った出来るだけ具体的な        到達目標の設定。

中期的な目標 : 最終的な目標を達成するための1~3年以内に達成すべき目標

        最終目標としているイベントに通じるイベントでの活躍や、タイム・競走得点などを設定。

短期的な目標 : 最終的な目標や中期的な目標に向けて現時点でクリアーしなくてはならない課題       

        動作解析や測定を行い目標達成の為に必要な要素との差異を明確化し課題を設定。 

 これらのような目標設定をした上で、学校や仕事のスケジュール、得点審査期間などとの兼ね合いの中から現実的に選択可能なトレーニングプログラムを選手と共に作り上げていきます。 

  <測定・解析>

 カウンセリングによって選手と目標意識を共有出来たところでまず行うのは「現状把握」です。

 選手がどの程度の競技力を持っているのかによってトレーニング強度は違ってきますし、選手の走り方の特性を理解しなくては改善点や強化ポイントは見えてきません。

 そこでまず始めに行うのが競技力の測定と動作解析です。

 僕が現役の頃は測定機材と言えばストップウォッチぐらいしか思い浮かばなかったのですが、現在ではパワーメーターやハートレイトモニターなどの機材が一般にも普及し始め様々な測定が行えるようになりました。またデジタルカメラは高画質になり、ビデオはハイビジョンの物が安価で出まわるようになったので誰にでも気軽に撮影が出来るようになっています。

 トレーナーズハウスでも様々な機材を駆使して測定や解析を行っている。。。と言いたいところですが、実は非常にアナログな物しか使っていません。

 普段使っているのは一眼レフのデジタルカメラとストップウォッチのみです。もちろんそれ以外の機材を使用して分析することもありますが、選手を指導する上で最も大切な事は「継続性」だと考えているため、機材の購入や測定実施に高額の費用を要する方法をなるべく使わない方が良いと思っているからです。

 もちろん日本代表やトッププロになればそれなりの予算も組めるでしょうから、そういった選手は最先端の機材を使用した高度な測定を行って今後の自転車競技発展のためにデータ採取を行って欲しいと思っています。

  測定 : 1000mタイムトライアル/フライング200m

 1000mタイムトライアルとフライング200mは競輪学校の受験種目としてご存じの方も多いと思いますが、自転車競技でも重視されている種目で、短距離選手の競技能力を見極めるには最も適切な種目だと考えています。

 この2種目を選手には走って貰うわけですが、測定の方法は至って普通です。

 400m走路で行う場合、1000mT.Tは200m毎のラップタイム、F200mでは50m毎のラップタイムを計測します。たったそれだけの事なのですが、実はこのラップタイムから様々な事が見えてくるんですね。

 例えば、自転車を人が走らせていると考えずに物体が移動していると考えて見ましょう。物体を動かすためには力がいりますよね。車輪が付いているのでそれほど大きな力はいらなくても、重さがあるのでそれなりに押さないと進んでくれません。一旦動き出すと勢いが付くので余り力を入れる必要は無くなりますが、スピードが上がってくると押し続けるのが辛くなってきます。それは車輪付きの物体が転がっていくための路面抵抗や、スピードが増すことによって強くなる空気抵抗などの走行抵抗が生じるからです。進めようとする力がその抵抗よりも強ければスピードは上昇し、弱ければ低下します。 それでは実際の自転車での走行に付いて考えてみましょう。

 スタートからの100mは最も大きな力(トルク)を必要とする区間です。その後の100mはダンシングポジションで上手く加速させる上半身の使い方や素早い重心の移動が要求されます。200mを通過する前後でシッティングポジションに移行すると、そこからさらにケイデンスは上昇しトップスピードに至ります。

 一旦トップスピードに乗った後は走行抵抗との戦いです。

 400mを通過下辺りから徐々に出力と抵抗のバランスが崩れ始め速度の低下が始まります。スタートから40秒を過ぎた辺りで無酸素系の出力が急激に低下するので一時的にスピードは大きく低下しますが、スピードの低下によって空気抵抗が減少するためそこからは残った無酸素系と有酸素系の能力に応じてスピードの低下は少なくなっていきます。

 こうして慣れ親しんだ1000mタイムトライアルでも、分割して考えるとこれまでとは違った何かが見えてきませんか!? スタートの200mはダッシュ力を測る指標になりますが、前半の100mのタイムと後半の100mまでしっかり比較すれば、低速から加速させる力が足らないのか、中間加速の力が無いのかが分けて考える事が出来ます。またその後の200mのタイムでトップスピードの高さや、ダンシングポジションでの中間加速の影響、シッティングポジションでの加速する力の有無などが見えてきます。そしてスピードの大きな低下が見られるポイントで無酸素系の能力を見ることが出来るでしょうし、その後の速度の低下で有酸素系の能力を測ることも出来ます。 

 このような測定で得られたデータをこの後に行う解析のデータとすりあわせて個々の選手のトレーニングプログラムに反映されていきます。 

次回に続く。

















TRAINER'S HOUSE 代表 : 佐藤一朗

略歴 : 中央大学商学部会計学科卒
   湘南医療福祉専門学校東洋療法本科卒
   自転車競技 世界選手権 元日本代表
   プロ競技選手 NKG63th ('89~'06)

資格 : 厚生労働大臣認可・国家資格
   はり師 きゅう師 あん摩マッサージ指圧師
   日本体育協会 公認コーチ(自転車競技)

web site  http://www.trainers-house.net/