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競走得点は絶対じゃない

 レースを予想するとき、まずは各選手の強さを大まかに順位付けして、それから並びや展開などを考えていくというのが一般的だろう。その際に役立つのが競走得点だ。
 

 競走得点はレースの格と着順によって与えられる点数であり、いわば選手の「偏差値」のようなものだ。
 

 基本的には選手の「級班」を決めるためのシステムで、ファンのためにつくられているものではないが、各選手の強さ、能力を数字で簡単に比較できるので実に便利である。
 

 予想紙などでは今期の得点と前期の得点が載っているので、その点数の差によって、選手の調子を大まかにつかむこともできる。
 

 競走得点が10点近く差があると、まちがいなく絶対である。10点下の選手は、なにをやっても、どんなに展開の助けがあったとしても、10点上の選手に勝つことはできない。
 

 たとえばF1の準決では、特選組の108点や109点の選手が予選から勝ち上がってきた97点や98点の選手と対戦するが、90点台の選手は100点台の選手にはどうあがいても太刀打ちできない。だいたいは得点上位の選手たちが確定板を独占するので、準決は固く収まりやすい。
 

 たとえば2012年9月の岐阜F1の2日目9Rの準決だ。
 

 徹底先行の和歌山・97期の稲毛健太の主導権取りが濃厚で、展開的には番手の福井・78期の北川紋部が有利である。しかし、本命は得点上位の北海道・88期の山田敦也である。
 

 北川は点数は103点、かたや山田の点数は109点で、6点の開きがあると、どんなに展開有利となっても簡単には勝たせてもらえない。
 

 レースは戦前の予想どおりに稲毛が先行して北川にとっては番手絶好の展開となり、愛媛・84期の渡部哲男が4番手、山田は8番手となる。
 

 最終バック手前から仕掛けた105点の渡部が103点の稲毛を捲りきり、近畿ラインはなす術もなく後退。これで渡部の1着かと思われたが、最終4角8番手だった山田が直線に入ってからイエローライン上をぐぐぐっと伸び、渡部に3分の4車身の差をつけて勝っている。得点上位の選手は展開不利をあっさりと吹き飛ばすぐらいの力を持っているのである。


着をまとめるのがうま
い選手は、点数がいく
ら高くても、車券的に
は強いとはいえない。



戦法によって点数に違いが出でくる


 競走得点は格選手の強さ、能力を推し量るには便利な数字だが、単純に数字を比較しただけではまずいケースもある。

 

 9車立てのレースならば5着の点数が基準になっているので、5着以上の着を取れば点数が上がるし、5着以下の着なら点数が下がるというのが大まかな競走得点のシステムである。
 

 たとえば、レースでは回れるところを回っての流れ込みの競走が多く、大きな着を取ることはないが連に絡むこともほとんどないマーク屋と、ときおり連絡みを果たすことがあるが、8、9着の大きな着を取ることのほうが多い捲り屋の選手がいたとする。
 

 点数的にはうまく着をまとめているマーク屋のほうが上になってしまうが、車券を買うファンからしてみれば、点数は高くても連絡みのほとんどないマーク屋には用はない。点数は低くてもときおり連絡みを果たしてくれる捲り屋のほうが狙ってみる価値があるし、車券的には捲り屋のほうが「強い」という評価になるだろう。
 

 そのため、単純な点数の比較だけでは車券的な強さを推し量ることはできないし、点数が高い選手ほど連絡みの可能性が高いともいえないのである。
 

 先行・捲りの自力型の場合は、逃げつぶれや捲り不発などでどうしても大きな着を取ってしまうケースが多くなるので、競走得点を比較するときは各選手の戦法も考慮に入れて考える必要があるのだ。


競走得点だけでは展開は読み切れない


 競走得点は選手の強さ、能力を推し量るのに役に立つが、絶対ではない。10点ぐらい違えば絶対といってもいいほどの力の差があるが、そういう例はまれである。たいていは多くても4、5点ぐらいの差であり、4、5点ぐらいならば展開などの助けを借りて力の差を埋めることができる範囲内である。

 

 さて、前述の岐阜F1の準決を例にとって、そのあたりをもう一度考えてみよう。
 

 あのレースで山田敦也が本命に推されていたのは、もちろん競走得点だけが理由ではなく、宮城・91期の菅田壱道という絶好の目標がいたことが大きいのである。
 

 詳しく書くと、菅田壱道、渡部哲男、稲毛健太の3分戦で、それぞれの点数は107点、105点、103点だ。しかも菅田の後ろは109点の山田敦也、110点の千葉・55期の鈴木誠と得点上位者が並んでいたので、菅田ラインが絶対の人気を集めていた。先行意欲では稲毛が上なのはあきらかだが、103点の稲毛の逃げならば107点の菅田で叩き返せるだろうというのが大方の読みだったはずである。
 

 ところが、競走得点よりも稲毛の先行意欲のほうがはるかに上回っていたせいで、7番手となってしまった菅田は捲り返せずに不発に終わっている。
 

 それでも、力と技で山田が1着に届いたが、2着が渡部のスジ違いで2車単は2千4百円の好配当になっている。


大ギア化によってレー
ス形態が変わり、競走
得点では展開が読みづ
らくなってきている。


 

大ギア化で見直しが求められている


 レースを予想するとき、まずは競走得点を頼りに各選手の強さを大まかに順位付けしていく。それから、ライン構成やレース展開を考えながら、予想を煮詰めていくというのが一般的な方法だろう。

 

 予想紙などを見ても、だいたいは得点の高い選手に重い印がついており、競走得点は車券予想にはなくてはならいものである。
 

 たとえば3分戦のレースならば、各ラインの先頭を走る自力型の力をやはり競走得点を頼りに比較して、最終バックを先頭で通過しているラインはどれかを考える。
 

 たとえば各ラインの自力型の得点が107点、105点、103点だったとすると、107点の自力型が最終バックを先頭で通過している可能性が高いと考えるのが妥当だろう。
 

 103点の選手が逃げても107点の選手なら捲れるだろうし、逆に107点の選手が逃げたら、103点の選手では捲れないだろうという考え方だ。
 

 その考え方はほぼ正しい。いや正確にいえば、正しかった。
 

 今は誰も彼もが大ギアを使っているので、いったん後手を踏まされると、力上位の選手でも巻き返しがむずかしくなってきている。
 

 たとえば前述の岐阜F1の準決のように、得点下位の選手の早駈けやカマシがうまく決まって一本棒の展開になってしまうと、得点上位の選手が不発に終わるケースが増えてきている。
 

 大ギア化によってレース形態は大きく変化してきており、競走得点を頼りに展開を読むのもむずかしくなってきているのである。


大ギア化の流れを否定するのは的外れだ


 話は横道にずれるかもしれないが、ここでちょっと大ギア化について考えてみたい。

 

 現在では大ギアが完全に主流となっているが、レースが単調でつまらなくなったとか、追い込み選手が追走一杯になって仕事ができなかったり、競り合いを避けるようになって、ライン戦の醍醐味が薄まってきたとか、否定的な意見がよく聞かれる。
 

 今の選手は大ギアを踏みこなせていない。ギアは3・57あれば十分だとか、大ギアでバックを踏めないから、つまらない落車が増えているとか、批判的な意見もある。
 

 しかし、現在のトップに君臨している選手たちがみんな大ギアを使っているのだから、彼らを追い、彼らを打ち負かそうとする選手たちも大ギアを使うのは当然の流れだし、この流れを止めることはもうは不可能だろう。
 

 選手たちもただ漫然と大ギアを使っているわけではなく、自分にあったギアはどれくらいなのか、自転車のセッティングやペダリングはどうすればいいかなど、試行錯誤をくりかえしながら頑張っているわけだから、一概に大ギア化を否定するのは的外れといえる。
 

 仮に今もで3・57のギアが主流のままだったら、競輪はどうなっていただろうか。変化のないものはいずれ衰退するのが定めであり、競輪競走も行き詰まって、今よりもっとつまらないものになっていたはずである。


競走得点が高めの自力
型の選手は戦法の幅が
広く、勝ちパターンも
多いので侮れない。


 

大ギア化で自力型は得点を稼ぎにくい


 大ギア化でレース形態が変化してきているので、競走得点についても見直しが求められているのは当然のことである。

 

 大ギア化で最も変化しているのはもちろん先行・捲りの自力型だ。先行でも捲りでも一発狙いのカマシが主流になってきているが、カマシ狙いは不発に終わる可能性が高いし、番手の選手の仕事もあまり期待できないので、自力型の選手は以前よりも着をまとめににくなっている。
 

 1着か9着の競走が多くなってきているので、どうしても競走得点は低くなりがちであり、そのへんを十分に考慮する必要がある。単純に競走得点だけでは自力型の強さを評価しくくになってきているのだ。
 

 だけど、今のトップクラスの選手たちは自力型ばかりじゃないか、という人がいるかもしれない。確かに競走得点のランキングを見ても、上位は自力型の選手ばかりだ。
 

 しかし、彼らの場合は、単純に先行・捲りだけでトップの座を維持しているわけではない。展開に応じて番手に飛びついたり、イン粘りをしたり、直線で中割り強襲を決めたりと、トップクラスの自力型は戦法の幅が広く、勝ちパターンも多いのである。
 

 これは別にトップクラスの選手だけには限らない話で、中堅どころの選手でも競走得点の高い自力型の選手は勝ちパターンが多彩で、侮れない存在であることが多いのである。


結局、競走得点は目安にしかならない


 最後にガールズ・ケイリンに触れておこう。

 

 ガールズはスタート当初は加瀬加奈子と中村由香里の2強といわれていたが、開催を重ねるごとに中川諒子、中山麗敏、増茂るるこ、小林莉子らが力をつけてきて混戦模様になってきた。競走得点も9月23日の時点では中川諒子がトップで、2位が加瀬加奈子、3位が中村由香里となっている。
 

 優勝も加瀬は6場所走って2回のみだし、中村も5場所走って2回のみで、8月、9月の開催では続々と初優勝の選手が誕生した、
 

 9月23日の平塚の決勝では、オッズでは競走得点の高い加瀬が1番手、増茂が2番手の人気だったが、2日間の予選の走りを見る限りでは増茂のほうが勢いがよく、決勝もその勢いのままに松戸に続いての連続優勝を飾っている。新聞によっては、増茂に本命を打っているところもあったのだ。
 

 結局、競走得点は各選手の強さ、能力を推し量るためには便利ではあるが、そこに表れてれている数字はある程度の目安にしかならない。
 

 各選手の現時点での調子や勢いや闘志などを十分に考慮して検討していかないと、正解には近づけない。
 

 もちろんこれはガールズに限ったことではなく、男子でも同じである。前述の岐阜F1の準決のように、得点の高い選手が得点の低い選手の先行意欲に苦戦させられることもあるのだから。